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なぜアプリはフリーミアム化するのか

サービス体系の違い 

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アトランティックシティやベガスのようなカジノリゾートで遊ぶのと、ディズニーランドのような遊園地リゾートで遊ぶのと、皆さんはどちらが好きでしょうか?カジノへは無料で自由に入れ、無料でお酒やショーを楽しむことが出来ますが、レートの高いテーブルで遊ぶとかなりのお金が必要となります。遊園地などはパスポートなどの入場料を支払えば、あとはアトラクションが乗り放題。どちらもエンターテイメントを代表するものですが、この料金体系って何かに似ていませんか?実はAppStoreのフリーミアムアプリは前者、有料アプリは後者に似ていたりします。

日本での認知度はそれほどでもありませんが、EAと言えばこれ!と言い切れてしまう同社の大看板、マッデンシリーズがMadden NFL 13 Socialとして去年フリーミアム化になっているので、他の有力IPが無料化になるかも?!と見ていた関係者も多いはずです。最近世界中のメディアが取り上げたReal Racing 3だけでなく、テトリスの無料化(おそらく傘下のPopCapのPlants vs. Zombies 2も)も発表しているElectronic Arts(以下、EA)ですが、ユーザー側のロジック(論理)で書かれた記事は見受けられるものの、肝心のEA側のロジックがあまり報道されていません。今回はお題が「なぜアプリはフリーミアム化するのか」ということなので、ブランド力のあるIP(知的財産)を多数保有するEAの視点から「なぜ」を紐解いていきたいと思います。

 

定価4.99ドルで300万ダウンロードのケース

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コストが200万ドルと仮定すると差し引き217万ドルの利益

 

売り切りの場合、デベロッパーが自らの判断で取れる行動の選択肢は多くありません。定価4.99ドルのアプリだと、セールと称して値下げ販売するのであれば、3.99、2.99、1.99、0.99ドルの4つの価格帯からしか選択出来ません。無料化にすることも可能ですが、広告など他の収益源がないとばら撒きで終わってしまいます。ダウンロード数の母数も有料というだけで、無料とは比較にならないくらい小さいものとなってしまうのが常識のようです。売り手側からすると売り上げを上げるために操作出来るのは価格だけという自由度の低い課金体系となっています。

これがフリーミアム(無料+アプリ内課金)になると話は変わってきます。SAPなどではかなりハイレベルな関数などを用いた利益計算のための公式を持っているでしょうが、便宜上簡素化した公式を使用します

 

無料+アプリ内課金で300万ダウンロードのケース

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コンバージョンが1%(100人に1人は対価を支払う)、ARPUが10ドル=30万ドル
コストが200万ドルと仮定すると差し引き170万ドルの損益

ということで、上記の条件設定だとフリーミアムでは赤字になってしまいます。ところが、フリーミアムになると売り切りアプリよりもはるかにダウンロード数が出るという事実を見逃してはなりません。アプリによっては有料版と無料版で軽く10倍の差がつくといわれることが多いので、ダウンロード数が上がれば上がるほど、売り上げも伸びていくという計算になります。

 

無料+アプリ内課金で3000万ダウンロードのケース

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コンバージョンが1%(100人に1人は対価を支払う)、ARPUが10ドル=300万ドル
コストが200万ドルと仮定すると差し引き100万ドルの利益

 

それ以上に重要なのは、フリーミアムアプリではデベロッパーが自らの判断で取れる行動の選択肢がより多いという点です。ダウンロード数を上げないことには話になりませんが、ダウンロード数は特定の行動(TapJoy、評価を書くなど)を取ったユーザーにゲーム内通貨をプレゼントすることで伸ばすことが可能です。ダウンロード数が一定以上になったら、あとはコンバージョンとARPUを上げるほうに注力することが可能です。仮に3000万ダウンロードに達してから、コンバージョンを0.1%上げただけ、ARPUを1ドル上げただけでもそこから得られる利益は莫大なものになります。売り手側からすると売り上げを上げるために操作出来る自由度が高いのが、フリーミアムモデルということになります。道理で日本のソーシャルゲームもダウンロード数、コンバージョン、ARPUを上げるために必死にイベントを行うわけです。

 

 

無料+アプリ内課金で3000万ダウンロードのケース その2

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コンバージョンが1.1%(100人に1人は対価を支払う)、ARPUが11ドル=363万ドル
コストが200万ドルと仮定すると差し引き163万ドルの利益

こうしたように売る側の論理から見ると、なぜフリーミアムアプリに移行していくのかが理解可能となってきます。まして強いIPを保有する企業であれば当然の帰結かなと思います。ダウンロード数もコンバージョンもARPUも全て変数ですが、売り上げの見通しを立てたり、どういった戦略を取るかの判断を下すにも使いやすい数値でもあるということを忘れてはいけません。今日もどこかで、ソーシャルやフリーミアムゲームの会社でデータマイニングの専門家が数字とにらめっこしながら、変数を動かすための企画会議が行われているはずです。

EAのような上場企業ではかけたコスト以上の回収が必須となってくるため、湯水のごとくお金を使ってくれる可処分所得が高い層をどう捕獲するか。この1点に尽きるのではないでしょうか。EAのようにグローバルで事業を行っている会社であれば、実は普通の日本人、アメリカ人、ヨーロッパ人よりお金を持っている東南アジアや中南米の富裕層なども取り込まないとなりません。お金を持っている人であろうと、お金を持っていない人であろうと売り切りだと回収できる金額は一律ですが、フリーミアムだと「中毒のようにはまった少数の可処分所得がそれなりにある層」からかなりの金額を回収出来るようになります。言ってしまえば、無料というのは魚を取るための網のようなもので、(誰でも知っているようなブランド名をつけた)網は大きければ大きいほど、大きい魚(可処分所得がそれなりにある層)を釣り上げる可能性があがるということになります。

 

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ゲームを遊ぶ側としては、気軽に楽しめればそれでいいという層もあれば、ゲームブランドや企業ブランドに対する思い入れが激しい層もいたりします。それぞれゲームに求めるものが異なるので、期待値に対するロジックもまた異なります。一方、売る側は売る側で全く違うロジックで動いているので、そこでユーザーとゲーム会社との間に溝が出来てしまうということです。ゲーム会社からすると、実際に対価を支払っている人からのフィードバック優先ということになるのでしょう。資本主義の論理からすると、お金の匂いがするほうへと商品やサービスがすり寄って行くのはゲームに限った話ではありません。まして、EAのような上場企業であれば、株主が納得する数字を計上しなくてはならないという点に会社としての存在意義がかかっています。文句を言う人もいれば、受け入れる人も当然出来てますが、資本主義社会においては営利追求を主目的とするのが企業なので、文句も言われても収益が上がっていれば痛くも痒くもないというのが本音でしょう。

AppsJPはメディアを自覚している手前、Real Racing 3のみを切り取ってフリーミアム化による是非に関してはなんとも言えません。変化が起きた場合の結果については良い面もあれば悪い面もあるのは何事に関しても言えることだとは思います。フリーミアム化を受け入れられる・受け入れられないはあくまで一人一人の期待値、価値観、嗜好などで違ってくるものだと思います。ただ確実に言えるのは、エンターテイメントの定義の一つは人々がストレスなく楽しめるものだということでしょうか。必要以上にストレスがかかったり、ストレス緩和のための財力があるお金持ちだけが楽しめるゲームはもはやエンターテイメントと言えるかどうかは非常に疑問とだけは言っておきます。カジノでさえも、レートの高いテーブルで遊ばなくとも十分満喫出来るようにはなっていますからね。Real Racing 3に関してはすでに待ち時間に関するアップデートはあったようですが、オーストラリアやニュージーランドでのフィードバックを受けどういう調整を施してから本番のグローバルリリースになるのかに注目したいと思います。またEAとは異なるフリーミアム戦略を展開している企業もありますが、その辺はまたの機会にでも触れたいと思います。

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